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ITシステムも地産地消? − 「The Economist / July 4th 2009」

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先週号のエコノミスト誌の表紙はエラいことになってて、ちょっとビックリしました(オバマ大統領がクマの口に手を振りながら入り込もうとしている様で、タイトルは『Welcome to Moscow]』)。

そんなキャッチーな表紙の先週号、英国でも報道されている麻生下ろしや政策実験国家とも言えるスウェーデンの話など、興味深い話が載っています。
そのほか、個人的に印象に残ったのは以下の記事でした。

*「不況がセルフサービスを後押しする 自分でやるのだ」(P.56)
The recession spurs self-service  Help yourself」(Economist.com

発展途上国で提供されている安価な労働力が、先進国の労働力の代替となり、仕事が全て奪われてしまう!…そのような危機感が高まっているという話は、色々な人からよく聞きます。
ハイコンセプト」も、まさにそういう状況にどのように対応するべきか、という趣旨の本でした。

私はIT業界で仕事をしていますが、やはりオフショア開発の拡大は無視できません(というか、オフショア絡みの仕事もやってます)。

そんな中、今年4月に、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)からオフショア開発動向に関する最新の調査報告が公開されています(以下はPDFのZIP圧縮ファイルです)。

*「IT人材市場動向調査 調査報告概要版No.4」(IPA ITスキル標準センター活動報告

この報告によると、調査対象企業262社の直接・間接発注のうち36%にあたる95社でオフショア開発を実施したことがあるという結果になったそうです。特に1001名以上規模の企業ではオフショア開発拡大の傾向が顕著で、76.7%の企業でオフショア開発が実施されたことがあるようです。

IPA_OffshoreData
IT人材市場動向調査 調査報告概要版No.4の『オフショア開発実績(P.9)』より抜粋)

もともとシステム開発を一次請けする国内の大規模企業では、ソフトウェアの具体的な設計をしたり、ソースコードをごりごり書いたり、出来上がったソフトウェア部品ひとつひとつをテストしたりする工程は、二次請け企業へ発注することが多いのですね。
二次請けをしている国内企業の競争状況が苛烈になってきていることは以前からよく言われてきていますが、その傾向がデータからも明らかに読み取れます。

このような国際調達が多く採用されている大きな理由には、これも以前から言われていることですが、コスト低減と人材確保が挙げられます。

オフショア開発は遠隔地との分散開発であり、また異文化間の協業であるため、プロジェクト状況の把握やマネジメントの難易度は高くなり、その分管理コストが高くつきます。
また、国家間の取引には法的・政治的なリスクもつきもので、極端な話、国交が断絶してしまったり、戦争になってしまう可能性も皆無ではありません。したがって、それらのリスクを織り込んだ計画やコスト見通しが必要になります。

しかし、それらを補って余りあるコスト効果や人材確保というメリットがオフショア開発には見込まれているわけで、このような状況になっているのですね。

…えーと、なんだかエコノミスト誌の記事からどんどん離れている気もしますが、つまり、そのような競合勢力の拡大と競争の激化という状況を踏まえて、また新しい競合として「顧客」というものが台頭してきている、というのが記事の趣旨なのでした。

もともと、インターネットのサービスに親しんでいる若年層は、人間を介したサービスよりも自分で手続きできるサービスをより気楽に感じ、セルフサービスという形態自体を好む傾向にあるそうです。インターネットサービスに親しむ若年層のひとりである私としても、やっぱセルフサービスの方が気楽だしぃい(←見事な若者感だ!)。

特に現在のような不況下では、セルフサービスによって削減される人件費や諸費用が大きな魅力になっているようで、セルフサービスの導入がますます加速しているそうです。「替えの利く」労働者にとっては、厳しさに拍車が掛かっているということになります。

システム開発の顧客といえば(業界的にもホットな)ユーザ企業やそのシステム企画部門になります。彼らがシステム開発を外部へ委託するのは、やはりシステム開発の専門性が高く、能力的にもコスト見合いからも、自らがシステムを実現することが現実的でないという認識からでしょう。

しかし最近では、ある程度のシステムはSalesForce社Force.comプラットフォームサービスFileMakerなどを利用することで開発の難易度はだいぶ下がりますし、GoogleAppEngineAmazon EC2などの所謂クラウド基盤によって、コスト有利な運用の選択肢も増えてきています(まぁ、これらはアプリケーション運用はカバーしませんけど)。

これらは、ITシステムの開発や運用についても、顧客によるセルフサービスが選択され得るひとつの要因となるように思えます。もし自分たちで簡単にシステム化・システム運用できるなら、そうする顧客も増えるでしょう。訳の分からない図や言葉を使う連中と異文化コミュニケーションをしなくても済みますし…。

異星人である私たちの立場としては、競合勢力はもちろん、開発力や運用力を備えた顧客にも代替されないような、稀有な価値を生み出す仕事をどうやって成していくかが、更に重要になってくるのでしょう。
システムを構築する専門性だけにしがみつくシステム開発企業が顧客から見放される未来は、そう遠くないのかもしれませんね。

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英国Economist誌(Fujisan.co.jp)

Written by nen

July 15th, 2009 at 8:00 P

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