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科学者の人間模様 - 「そして世界に不確定性がもたらされた」

with one comment

量子力学の理論が知りたいなら、多分ブルーバックスの本を数冊読むのが判りやすいのではないかと思います。本書「そして世界に不確定性がもたらされた」は、むしろ人間模様を読む本と見つけたり!(勝手に)

科学者だって、好きなやつも嫌いなやつもいますよ!にんげんだもの!

そして世界に不確定性がもたらされた

本書では様々な物理学者が登場しますが、主人公格として3人が挙げられます。

量子力学を確立し、発展させていった2人がハイゼンベルク(不確定性理論を提案した人)、そしてボーア(量子力学の先駆けを担った人)。量子力学に反対した1人であるアインシュタイン(言うまでもなく相対性理論の人)です。彼らは量子力学黎明期において、互いに尊敬しあい、またある時期以降は激しく議論を戦わせる間柄になった物理学者たちです。本書では、彼らを中心に新しい物理学がどのように産まれて来たかをドラマチックに描いています。

面白いのは守旧派の首領たるアインシュタインで、彼は新しい物理学である量子物理学に対して、言ってみれば古典物理学の最大級の巨人です。量子力学の考え方を頑迷なまでに拒絶し、死に至るまでその態度を貫きました。量子力学に関する話題では、それは彼が新しいパラダイムシフトに対応出来なかったからであり、衰えを示しているという趣旨の文章も時々見かけます。

確かに晩年のアインシュタインは神秘的な言葉を使って韜晦めいた物言いが増えたようですが(本書P.160あたり)、それでも依然としてその反論は周囲を巻き込むだけの影響力を持っていたのですね。個人的に印象に残っているのは第5回ソルヴェー会議のシーンです。

「チェスを指しているようだった」と彼は報告している。

「アインシュタインは常に新たな議論を用意していた。ボーアはそのつど、もやもやした哲学の雲の固まりのようなものから道具を見つけてきては、一つまた一つと叩き潰していく。アインシュタインはまるでビックリ箱のようで、朝がくるたびに新しいものが飛び出してくる」(P.186)

ボーアは哲学的で曖昧な表現を好んで使う傾向があったようで、ハイゼンベルクもボーアのそのような点に反発を覚えることが多かったようです。新しい科学を打ち立てようとしている革新派の方が、ぼんやりむにゃむにゃとした態度で議論していたんですね。あーこういう人いるよねーと思いましたよ:-)。

本書は人間模様も面白いですが、どのような発想から量子力学が生まれ、どのように発展してきたのか、その思想や理論の内容を分かり易く見ていくこともできます(それが本流なのか、むしろ)。冒頭に書いたように、ブルーバックスで理論的な内容を簡単に掴んでから読んでみると、また興味深く読めるのではないでしょうか。

Written by nen

May 31st, 2009 at 5:54 P

One Response to '科学者の人間模様 - 「そして世界に不確定性がもたらされた」'

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    The firmware will end up being released in this full
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